「遊郭は悪いもんじゃなかった」という説と新疆綿の話。
鬼滅の刃のアニメ続編「鬼滅の刃ー遊郭編ー」の放送が決まり、話題になっているのが「遊郭」。
マンガを読んでいない人も「遊郭」という言葉に対して反応しているので、Twitter上では収拾のつかない状況・・・。
マンガを読んで感じたのは、鬼滅の刃では遊郭は舞台にはなれど、決して美化されていないということ。
むしろ、人間が鬼になった背景が悲惨すぎて、
- 花魁などの美しい女性達が出てくる華やかな部分
- 人間扱いされなかった人たちがゴミのように打ち捨てられる地獄
が両方表現されていると感じた。
「遊郭は悪いもんじゃなかった」という説
ところで、気になったのが「遊郭は悪いもんじゃなかった」という意見がある、ということ。
「遊郭って職業訓練校みたいなもんでね、悪いもんじゃなかったんですよ😊」みたいな大人が既に散見されるのでそらまあ危惧も抱かれよう…
— 🍣かねだ🍣 (@_kaneda_) February 16, 2021
「遊郭がセーフティネットだった」という愚論は「現代において性風俗産業は女性のセーフティネットである」というたわごとを強化してしまうので、しっかり否定しておかないといけないんですよね…
— 箱[いぬ いぬ] (倉田タカシ) (@deadpop) February 16, 2021
特に、印象的だったのがこの方のツイート。
きめつのアニメの話で遊郭をどう描くか?みたいな話が出てたから思い出したことを呟いている。いや、歴博ジェンダー展で見た「実際の遊郭の暮らし」が本当に本当に激クソヤバだったんですけど、
— ヒグマは黙らない (@m_tobermory) February 15, 2021
……だけど、その展示を見ながら「でもね、花魁はものすごく尊敬されてたしお金持ちだったらしいよ」みたいなこと(思い込み)を話しよるおっさんがいたって話を聞いて
— ヒグマは黙らない (@m_tobermory) February 15, 2021
そのおっさんに、目の前の展示では考えが変わらないくらいに強く思い込ませたもんは何か?ていうと……従来の華やかな「描き方」で……でもそういうもんの「描き手」て結局男の人たちだったからそうなってたのでは……みたいなことを考えてる
— ヒグマは黙らない (@m_tobermory) February 15, 2021
「性差の日本史」展で見た衝撃の資料の一つがこの、とある江戸末期ごろの遊女の食事の記録。こんなん普通に飢えて死ぬやろというレベル。でも生きて、しかも夜遅くまで客を取らされていたというのだから。平均寿命(年齢じゃなく寿命)が19〜20歳だったというのも頷ける。 pic.twitter.com/GYeYuE9VxH
— 櫛 海月 (@kusikurage) November 29, 2020
※公式引用機能を利用したツイートの引用は、Twitter内での引用RTと同様、twitter社ポリシーにより許可されています。
遊女の置かれた悲惨な展示を目の前にしながらも「悪いもんじゃなかった」と認識を変えることが出来ないのはなぜなんだろう・・・。
人は信じたいものを見る
なぜ認識を変えられないのか。
その答えは「人は信じたいものを見るから」 だと思う。
「自分が認識した情報以外のことを見えなくしてしまう心理的盲点」のことをストコーマと呼ぶ。
物理的には視界に入っているのに、脳が認識することが出来ない状態ともいわれている。
「不都合な真実」という映画のタイトルがあるけれどまさにアレで、"消費者"として、もしくは消費者になりうる者として、買う女性が多少はいい思いをしていると思わないと消費者として辛いのではないかと。
昔、仕事で関西の有名なストリップに行ったことがあるのですが、本っっっ当に衝撃だったのが、おじさんにおっぱいを触られたストリッパーが一人一人に「触ってくれてありがとう^^」と言っていたこと。
いまだに声とそのイントネーションを思い出すほどの衝撃だった。
よほど倒錯した性癖の持ち主でもない限り、いくらカネを払っているとはいえ相手が本音では嫌がっていると思うと萎えてしまう。
だから、女の子は「触ってくれてありがとう」と言ってくれる。
「売春している側も気持ちいいんだからwin-winだ」とかいう意見を見たことがあるけれど、そうしたリップサービスを真に受けなければ良心が持たないのではないかと。
そういうわけで「遊郭は悪いもんじゃなかった」と一部男性が言うのは消費者目線を抜け出せないからではないかと想像。悲惨さを受け入れることが出来ない。
※あとは、様々な作品で「遊郭=花魁」として描かれてきて、”ちょっと陰のある美しい女性”の成功ストーリーにフォーカスされるからというのも遠因としてあると思う。例外的な超トップの存在だからこそ物語化され、その他大勢はいないものにされてしまう。
無印良品やユニクロのウイグル新疆綿
とはいえ、「消費者として現実を受け入れることが出来ない」というのは他人事ではないなと思った。
2013年のバングラデシュの裁縫工場が崩落した事故。
3500人以上の人が死傷したけれど、そのインパクトの割にはテレビでは報道されなかったと思う。
また、ときどきネットニュースでは見るけれど、テレビでそれほど多くは放送されないウイグルの強制収容&強制労働問題。
ユニクロや無印良品をよく利用する消費者として、自らこの問題について調べようとは思っていなかったのが正直なところ。
良い商品を安く手に入れたいけど、自分が買った商品が児童労働や強制労働によって作られているとは思いたくない・・・知りたくない・・・。
服などの商品の場合は他のメーカーで代わりを買えば良いので、「不都合な真実」を突き付けられたら受け入れることも出来ると思う。
でも、代わりのない商品の場合はどうだろう・・・と自分の胸に手を置いて考えてしまう。
100円で買えるチョコレートと同じ量のチョコレートがフェアトレードのメーカーで800円で売っているのを見たとき、「そうはいっても大量に注文するからコストが抑えられるんじゃないか」と考えたのも事実。
「遊郭はセーフティーネット」「結婚相談所の役割も果たしていた」「孤児院でもあった」という意見と同じように、「不都合な真実」に目をつぶって、無意識のうちに消費者として都合よく解釈しないだろうか。
鬼滅の刃、まだ読んでない方は今更と思わず読んでみて!
DMM電子書籍なら初回限定で全作品50%オフという破格のキャンペーンやってます。クーポンはこちら。
「最後の色街」と呼ばれ、今も150軒以上の遊郭の建物が残る飛田新地。全部読みました。スカウトマンの杉坂氏が描くストーリーと、ジャーナリストの井上氏が描くストーリーで微妙に世界が異なるのも興味深い。